研修会「農業法人と個人農業者の会計・税務の留意点」

  • 開催日時:2016年 8月 4日   13:30~16:30
  • 場所:東京
  • 主催者:税務研究会

農業者の高齢化や昨今の企業の農業参入に伴い、農地所有適格法人(改正前:農業生産法人)の設立が進められています。農業生産法人数は15,106法人(平成2711日現在、農林水産省)となっており、平成22年に比べ3,277法人増加(27.7%増)しており、法人化を機に税理士へのニーズも高まっているといえます。個人農家においては農協の指導の下で確定申告を行うことが多いと思いますが、法人化後は農協で対応できないことが理由の一つです。また、平成21年の農地法改正により農地所有適格法人以外の一般企業においても農業参入(新たに2,039法人)が進み、改正前の約5倍のペースとなっています。

そこで、本セミナーでは、農業法人における会計及び税務について一般の法人とは異なる特徴的な部分の解説を行うとともに、実際に起こっている問題なども紹介することで、農業税務の理解を深めることを目標とします。本セミナーを通じて、今後の税務相談や実務に活かして頂ければと思います。

 

具体的な研修内容:

1.農地法等の概要

・農地を取得することができる農地所有適格法人の概要・・・法人形態要件、事業要件、構成員要件及び役員要件について解説します。

・農業参入の要件、認定農業者制度の概要、農事組合法人の概要について解説します。

 

2.農業法人の会計

・収益の計上基準、交付金等の種類(米又は畑作物の直接支払交付金、水田活用の直接支払交付金、収入減少影響緩和対策交付金など)、営農類型別(稲作農家、野菜農家など)の会計処理について解説します。

 農業収入にはどのようなものがあるか、どのタイミングで収益計上するか、どのような補助金があるのか、一般には馴染みのない取引が多いと思われますので、その部分を中心に解説します。

 

3.農業法人特有の税務

 農業経営基盤強化準備金、農用地等の圧縮記帳、肉用牛免税、農事組合法人の従事分量配当、農地等を譲渡した場合の所得控除について解説します

 農業経営基盤強化準備金は、税法上損金算入が認められる数少ない準備金の一つです。どの交付金収入に対応して準備金を計上することができるのか、その要件等を整理して解説します。また、農用地等の圧縮記帳については、農業経営基盤準備金の戻入益に対応し、一定の要件を満たした農用地等を取得した場合に圧縮記帳の適用が認められる制度です。

 肉用牛免税については、一定の肉用牛の売却益について、所得控除が認められる制度で、その要件等を確認します。

 一定の農事組合法人については、農業に従事した程度に応じてする従事分量配当について、損金算入が認められています。この従事分量配当は、損金算入されるだけでなく、源泉徴収が不要で、消費税の仕入税額控除が認められています。

 

4.農業法人の税務一般

 農業法人に係る税務のうち、国庫補助金等の圧縮記帳の適用可否や所有権移転外リースなど、特徴的な部分を中心にポイントに実際に問題になった事例ついて解説します。

 農業は補助金や交付金をもらうケースが多く、国庫補助金等の圧縮記帳の適用があるか検討する必要があります。管理団体を通じてもらう間接補助金についても解説します。

 また、リース導入の際に補助を受けることがあります。これは補助金を受け取っているのと同様ですが、この場合の国庫補助金等の圧縮記帳の適用可否について解説します。

 

5.農業法人設立時の留意点

 補助事業により取得した資産の移転や新規設立法人の消費税の納税義務の判定など、農業法人設立時の税務について留意点を解説します。

 補助事業により取得した資産を譲渡等する場合には、その補助金の返還が必要な場合があるため、法人化の際は留意する必要があります。